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骨髄増殖性腫瘍(MPN)に関する診断や治療について理解を深めていただくことを目的としたサイトです

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トップ > 座談会 骨髄増殖性腫瘍治療における医師と患者さんのギャップを考える

骨髄増殖性腫瘍(Myeloproliferative neoplasms:MPN)のさまざまな症状は、患者さんの生活の質(Quality of life:QOL)に影響することが分かっています。患者さんは自身の症状をきちんと把握して、すみやかに医師に伝えることが重要です。それには基本的な疾患知識が必要であり、自分の病気の状態や治療についてもきちんと認識しておくことが、より良い治療につながります。
本座談会では、MPN患者さんのQOLやMPN患者さんと医師の認識について調査を行ったイギリスのClaire Harrison 先生をお招きし、MPN治療の実態をご解説いただくとともに、血液疾患がご専門で、患者会の顧問医でもある下田 和哉 先生(宮崎大学)、山口 博樹 先生(日本医科大学)、桐戸 敬太 先生(山梨大学)、および患者会代表の瀧 香織さんに、より良いMPN治療のための課題や取り組みを伺いました。
MPN患者さんがより良い治療を受けていただくために、本コーナーがお役に立てれば幸いです。

基調講演 病気をよく知る、症状を把握する、そして、医師に伝える 基調講演 病気をよく知る、症状を把握する、そして、医師に伝える

Claire Harrison先生(Guys and St Thomas' Hospital, London)

MPNの症状って?

骨髄増殖性腫瘍(MPN)は、血液細胞が増えることによりさまざまな症状がでる病気です。病気が進行するにつれて、MPN患者さんの 35~45%は何らかの合併症が現れています 1)。MPN?と診断された時には、患者さんは?MPN?でよく見られる10 個の症状のうち、平均して5.8 個の症状がありました 2)。また、約90%の MPN 患者さんが過去1年間に?MPN?による症状を経験していました 2)。このように、?MPN?患者さんの多くが何らかの症状を抱えていることが分かります。

症状があるとどうなるの?

症状があると、MPN(骨髄線維症、および真性多血症)患者さんは、予定していた活動ができなくなったり、仕事を休んだりする割合が高く、生活の質(QOL)が低下していました(図11)。さらに予後スコア(今後の病気の経過を予測するための点数)よりも、症状の強さの方が、QOL 等に影響が出ていました(図11)。MPN 患者さんの生活は、症状の出かたに影響されることが分かります。そうなると、日々の生活をよりよく過ごすためには、患者さんが症状をきちんと把握し、その症状を医師に伝え、治療へと結びつけていくことが非常に大切です。しかし、患者さん自身が病気の進み具合を把握していなかったり?1)、症状があっても、それが病気によるものだと気が付いていなかったりすることが多いです 3)。患者さんが自分の症状を正しく評価できていなければ、より良い治療を受けられなくなってしまうため、正しい病気の知識を身に付けて、治療を進めていきましょう。

なんでお医者さんに症状を伝える必要があるの?

患者さんは医師との間に、病気の進み具合や症状の認識に差が生じないようにするためにも、きちんと症状を伝えることが大切です。MPN と診断された時に、ほとんどの患者さんは MPN に関連する症状を経験していましたが、医師は真性多血症と本態性血小板血症の約半数の患者さんには症状がないと考えているという報告がされています(図23)
こうした認識のギャップを解消して、治療を進めていくためには、患者さんは、病気をよく理解したうえで症状をきちんと医師に伝える、そして医師は患者さんからの訴えを治療に反映させる、という良好なコミュニケーションを取っていくことが大切です。

ポイント

□ 患者さんは自身の症状を正しく評価し、医師に伝えることが重要である。

□ 患者さんと医師で症状の認識に、ギャップが生じていることがある。

□ 認識のギャップを生まないためには、病気の知識とコミュニケーションが重要である。

図1
図2

1) Mesa R, et al. BMC Cancer. 2016;16:167.
2) Harrison CN, et al. Ann Hematol. 2017;96:1653-1665.
3) Mesa RA, et al. Cancer. 2017;123:449-458.

ディスカッション 骨髄増殖性腫瘍治療を考える ディスカッション 骨髄増殖性腫瘍治療を考える

患者さんと医療者が認識をあわせて治療に取り組むために

症状をきちんと評価できるようになるために

下田先生 MPN では患者さんによる症状の評価が、治療を進めていくうえでとても重要です。しかし、患者さんがご自分の病気の進み具合や症状を正しく把握できていないと感じることがありますが、先生のご経験ではいかがでしょうか。

Harrison先生 治療に積極的な患者さんでも、実はご自分の病気の進み具合を把握していないことがよくありますし、病気への理解不足があると思われます。

下田先生MPN10 スコアシートは、患者さんが病気による症状を評価する質問票です。このシートは、MPN の代表的な10 症状について、該当の症状が「なし」の場合を「0」、考えられる「最悪の状態」を「10」としてそれぞれ 0~10 点で点数をつけることで、病気による症状を簡単に評価することができます。このMPN10 スコアシートは、患者さんの病気による症状評価に有用でしょうか。

まずはこちら、症状チェックシート: 骨髄線維症真性多血症本態性血小板血症

詳細はこちら、症状評価フォーム: 骨髄線維症真性多血症本態性血小板血症

山口先生 患者会に参加している患者さんにこのシートを使ってもらうと、症状を反映したスコアが出るようですが、患者会に参加していない患者さんではスコアが 0 になることもよくあります。病気への理解の差が、こうしたシートを用いた症状の評価にも影響するのではないでしょうか。

瀧さん 患者会は病気への意識が高い人達の集まりですので、より正確に症状を評価できるのだと思います。MPN の基本的な知識がないと、こうしたシートを使っても症状を評価することは難しく、医師に質問しようにも何を質問していいのか分からない場合もあると思います。

山口先生 患者さんが MPN をしっかりと理解していれば、より正確に症状を評価して医師に伝えることが可能になり、より良い治療へとつながりますので、病気の理解は重要ですね。

患者さんと医師の認識のギャップを埋めるには

下田先生 患者さんが認識しているご自分の病気の進み具合や症状、治療目標が、医師の認識とは異なっていることがあるようですが、患者さんと医師との間のこうした認識のギャップをなくすにはどうしたらよいでしょうか。

山口先生 外来には、さまざまな病気の患者さんがいらっしゃり、医師は限りある診療時間の中でたくさんの患者さんを診なければなりません。時間の制限がある中でも、しっかりと患者さんとコミュニケーションを取る工夫が必要だと思います。

Harrison先生 私が診療しているロンドンでは、特定の診療科に特化した診療所が珍しくなく、看護師も「specialist nurse」というその病気に非常に詳しい方がいます。医師の時間がとれないところは、specialist nurse が中心となって、薬剤師などの他のメディカルスタッフとともにチーム医療で、患者さんとのコミュニケーションを補助する体制となっています。

山口先生 日本では MPN の専門外来はほとんどありませんので、MPN に特化した体制を整えるのは難しいかもしれませんが、メディカルスタッフの協力は重要と思われますね。

Harrison先生 患者さんの中には、忙しい医師には質問がしづらいという方もいらっしゃいます。患者さんが質問しやすい場を設けるという意味でも、メディカルスタッフの方が入ったチーム医療は意義があると思います。

山口先生 メディカルスタッフの方の協力があり、加えて患者さんが病気のことをしっかりと理解しているという土壌があると、診療がスムーズになり、患者さんと医師とのギャップも生じにくくなるのではないでしょうか。

桐戸先生 患者さんがご自分で勉強されるには、患者会に参加されたり、製薬会社が公開している情報を活用したりするとよいと思います。

日本とイギリスでの患者会活動について

患者会MPN-JAPAN の多岐にわたる活動
ー勉強会の開催から政府や製薬会社への提言、海外情報の翻訳などー

下田先生 瀧さんは、MPNの患者会 MPN-JAPAN の代表をされていますが、会の活動を紹介していただけますか。

瀧さん 勉強会や交流会の開催をはじめ、メールでの相談受け付け、薬剤の開発について政府や製薬会社への提言、海外の MPN 情報の翻訳・情報共有など、多岐にわたる活動を行っています。

下田先生 勉強会や交流会は、具体的にはどのように行っているのですか。

瀧さん 地域ごとに勉強会を開催し、勉強会後に患者さんやご家族同士が食事をしながら親睦を深める交流会を開催しています。また、患者さん同士が対等な立場で支え合う「ピアサポート」の関係を作っていけるように、ピアサポートのトレーニングなども行っています。

下田先生 情報提供については、どのような形で行っていますか。

瀧さん 勉強会のほかに、ホームページFacebook からも情報提供していますし、MPN 専門医の先生方のご協力のもとに作った小冊子の配布も行っています。小冊子はホームページで公開するとともに、ご連絡をいただければ郵送することも可能です。

患者会 MPN Voice 活動について ー患者さん同士がつながるサポートー

Harrison先生 MPN-JAPAN の活動は、とても素晴しいですね。イギリスには MPN Voice という患者会があるのですが、活動内容はとても似ています。

下田先生 MPN Voice でも、ピアサポートのように患者さん同士が支え合うシステムがあるのですか。

Harrison先生 同じような立場にある患者さんを紹介する「バディシステム」というものがあります。例えば、MPN で移植を行うことはまれですが、これから移植を行う方に、既に移植を受けた方を紹介すれば、当事者同士の話をすることができ患者さんのサポートになります。

骨髄増殖性腫瘍の認知度をいかに高めていくか

Harrison先生 MPN Voice では、骨髄増殖性腫瘍(MPN)の認知度をいかに高めていくかが課題の1つとなっているのですが、MPN-JAPAN ではこの点はいかがですか。

瀧さん MPN-JAPAN では、9月の第2木曜日を日本骨髄増殖性腫瘍の日(Japan MPN Day)として記念日にし、認知度を高めるためのイベントなどを行っていますが、これからは、インターネットを使った情報発信などもより進めていきたいと思っています。

桐戸先生 私は、MPN-JAPAN の患者さんに向けてネット上で講演を行うことがあるのですが、こうしたものを、MPN-JAPAN から YouTube などで一般公開していく計画があります。

下田先生 医療従事者の間でも、MPN の認知度はあまり高くないという問題がありますが、この点については何か工夫できることはあるでしょうか。

Harrison先生 MPN Voice では、MPN の疾患情報と MPN に罹患していることを説明した小さなカードを患者さんに配布しています。このカードを提示すれば、緊急時などに MPN に詳しくない医師が診療しても、スムーズに対応してもらえます。

下田先生 患者さんや一般の方々に MPN をよく知ってもらうには、楽しく学べる形での情報発信を考えていく必要がありそうですね。

瀧さん MPN の啓発活動については、これからやるべきことがたくさんありますので、協力していただける方を増やして、みんなで取り組んでいきたいと思います。

まとめ

MPN患者さんの日常生活は、症状の有無や強さに影響されると考えられます。日々の生活をより快適に過ごすには、ご自身の症状をきちんと把握して、その症状を医師に伝え、治療へと結びつけていくことが非常に重要です。それには基本的な疾患知識を持つとともに、ご自身の病気の状態や治療についてもきちんと認識しておく必要があります。本座談会では、病気の知識の重要性や、患者さんと医師が同じ認識で治療に取り組むことの重要性、そのためのコミュニケーションの在り方について、患者さんと医師それぞれの立場からお話しいただきました。また患者会MPN-JAPANのさまざまな取り組みをご紹介いただき、こうした会がどのように患者さんをサポートしているのかお話しいただきました。正しい知識をご自分に合った方法で積極的に身に付けて、医療者としっかりコミュニケーションを取りながら、治療に取り組んでいただければと思います。

各骨髄増殖性腫瘍の専門医による詳しい解説は下記よりご覧ください。

※骨髄増殖性腫瘍は、骨髄系細胞の著しい増殖を伴い、造血幹細胞レベルでの腫瘍化によって発症する疾患の総称です。

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